The Naked Darkness
夜は子どもの頃から特別な時間だった。光の届かない闇の向こうに何があるのだろうと思いを廻らせる。未知の存在との出逢いを想像して心踊ったり、どこまでも深く暗い闇から死の気配を感じ、恐怖を覚えたりした。夜の底知れぬ闇は恐怖でもあり、一方では素直に自己と向き合うことができる思索の時間でもあった。写真を始めてからも自然と夜に撮影することが多くなった。夜の撮影は闇に潜り、風景に歩み寄るのでより深く風景と対峙することができる。あれこれ考えながらゆっくりと三脚を組む。撮影場所は静まりかえった夜の郊外。それらの場所では、闇の奥から風景が微かに発する謎めいた魅力を感じることができる場所がある。微かな気配を長時間露光で浮かび上がらせ定着させていく。
2004年 キヤノンギャラリー(東京、大阪、名古屋、仙台)